あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

三宅由佳莉さんのチャレンジ

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 先日、「海上自衛隊東京音楽隊のチャレンジ」という記事を書きました。

 彼らの演奏活動を見る限り、戦後日本が謂れなく課せられてきたタブーに対し、果敢に挑戦しているに違いないとの内容でした。

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 今回は、三宅由佳莉さんがこれまでチャレンジしてこられた楽曲やイベントなどを振り返ることで、東京音楽隊の演奏活動というものを改めて考えてみようと思います。

 大学で声楽を修められたソプラノ歌手である三宅由佳莉さんにとって、東京音楽隊に配属されてから、クラシック以外の楽曲の歌唱を担当すること自体、大変な違和感と抵抗感があったものと思われます。ある業界誌のインタビューで、次のように語ってらっしゃいます。

「大学で学んだのはクラシックであり、自分はクラシックの歌い手であるという意識が常にありました。でも、東京音楽隊の演奏を聴いてくださるお客さまは、クラシックのファンだけではもちろんありません。演歌が好きな年配の方もいれば、アニメソングが好きなお子さんもいます。だから、それまで歌ったことがなかった演歌やアニメの歌、アイドル歌手の歌などを必死に練習して、何とか歌えるようになりました。今でも上手に歌えているとは思いませんが、たとえ上手でなくても、お客さまに喜んでもらえるならそれでいい。そう思えるようになりました」

 海上自衛官として、様々な歌を歌うこと自体、三宅さんにとっては大きなチャレンジであったと言えますね。

 この動画は、震災の年、平成23年9月27日に行われたランチタイムコンサートで披露された「また君に恋してる」です。テレビCMでも使われた名曲ですね。

 坂本冬美さんのオリジナルももちろん素晴らしいのですが、まだ24歳であどけなさが残る三宅さんが、精一杯の気持ちを込めてチャレンジした大人の恋歌は、聴く人の心を揺さぶります。

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 このほか、テレサ・テンさんの「時の流れに身を任せ」など、本当に様々な曲にチャレンジされてきましたし、自分なりの解釈と表現で新しい世界をつくってこられました。

 ディズニー映画、「アナと雪の女王」の主題歌、「レット・イット・ゴー」については、そのチャレンジの軌跡について、私なりに考察した記事がありますので、読んでいただけると幸いです。

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 このようななかで、異色のチャレンジと言えるのは、各種イベントでの「国歌」の独唱でしょう。これについては、下の記事でも取り上げましたので、よかったら読んでみてください。

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 このように、演歌から国歌まで、さまざまな楽曲にチャレンジされてきた三宅由佳莉さんですが、なかでもハードルが高かったのが、アニソンではなかったかと思います。

 宇宙戦艦ヤマトについては、海上自衛隊としても違和感がないし、三宅さんが入隊する以前から、海上自衛隊の各音楽隊では演奏されていました。また、川上良司さんのボーカルがメインですので、ソプラノ歌手である三宅さんの美しいスキャットが加わることに何の抵抗もありませんよね。

 でも、アニソンのみのアルバム「ブラバン・ヒーローズ」の企画にあたっては、おそらく様々な軋轢・葛藤があったのではないかと想像します。将来の日本を担う子供達に海上自衛隊への関心を持ってもらうという大義名分はあるにせよ、「自衛隊の音楽隊がアニソンのアルバムを出す」ことのインパクトは決して小さくないからです。

 また、三宅由佳莉さんにとっても、新たな歌唱法の習得が必要となります。これはかなりハードなチャレンジだったのではないかと思います。アルバムリリースの日に行われたミニライブで、新世紀エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」を披露する三宅由佳莉さんの動画です。ご自分で考えられた振り付けも格好よいし、動画としては素敵な仕上がりです。でも、とても苦しそうに歌っておられる感じがするので、最初にこの動画を見たときはちょっと胸が痛みました。

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 そして、一番のチャレンジが「キューティーハニー」でしょう。

 下の写真はこの曲のPVの一コマです、とても楽しそうに、表情も豊かに活き活きとこの歌を歌う三宅由佳莉さんは、制服を着ていなければ、自衛官とは思えません。

 この歌を、制服姿で、品位を保ったまま、変な色気も感じさせず、しかも画面に釘付けにされるような健康的で魅力に溢れる表現方法で歌われる三宅さんには、エンターテイナーとしての天賦の才があるとしか思えません。

 画像下のリンクから飛んでみてください。

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海上自衛隊東京音楽隊 - キューティーハニー - YouTube

 ところで、この曲は、海自だからこそ実現したのだと私は思っています。陸上自衛隊は、自らが最後の砦であることをよく自覚していますので、敢えてリスクをとってまでこの楽曲に挑戦はしなかっただろうと思いますし、航空自衛隊は、サバけたイメージがありますが、意外に保守的だと私は感じています。

  海上自衛隊は、「伝統墨守唯我独尊」と揶揄されるほど、帝国海軍以来の伝統や慣習を色濃く残していますが、伝統墨守とは裏腹に、チャレンジすることは海軍の役割であることも強く自覚しています。

 海軍がチャレンジングフォースであることについては、また別の記事で取り上げてみたいと思いますが、とにかく、私の中では、「キューティーハニー」こそが、三宅由佳莉さんの、そして海上自衛隊東京音楽隊のチャレンジの金字塔に他ならないのです。

 今年も、残すところわずかとなりました。

 三宅由佳莉さんのチャレンジは来年も続くでしょう。いつもいつも、新しいことにチャレンジし、ミラクルでファンを驚かすことを楽しんでおられるのかもしれません。

 今後のチャレンジとミラクルが楽しみです。

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【追記】

 その後、海軍がチャレンジングフォースであることについて書きました。

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