あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

海上自衛隊東京音楽隊の第60回定例演奏会(2019年)

 昭和女子大学人見記念講堂で開催された、海上自衛隊東京音楽隊の第60回定例演奏会を聴きに行ってまいりました。東京音楽隊は、年間120〜130回もの演奏活動を展開していますが、その内容や規模は、それぞれの任務の目的ごとに、実に多彩です。ãã¢ãã»ããªãªï¼ã´ã©ã¼ã«ã«.jpgf:id:RetCapt1501:20190228003224p:plain

 数名の小規模ユニットでの慰問演奏から、今年2月の定期演奏会のようにサントリーホールでの格調高いクラシックコンサートまで、演奏形式の幅も広いですし、ちょっと変わったところでは、中央競馬会GⅠレースでのファンファーレや大相撲千秋楽での国歌吹奏までこなします。

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 これらの多くは、全国の地方協力本部からの依頼による広報や民生支援のための演奏ですが、東京音楽隊の自主広報として行われているのが、年2回(通常、9月と12月)の定例演奏会と、年度末(2月〜3月)の定期演奏会です。

 定例演奏会や定期演奏会は、様々なコンサートホールで開催されてきましたが、ここ数年の実績を見ますと、9月の定例は昭和女子大人見記念講堂、12月の定例はすみだトリフォニーホール、2月の定期は東京オペラシティに落ち着いてきたようです。ただ、今年2月の定期は、あのサントリーホールでしたし、来年も引き続き同ホールでの開催が決まっています。ひょっとして、サントリーホールでの定期演奏会が定例化するのかも知れません、予算が許せばの話ですが。

 前置きが長くなりました、今回は人見記念講堂の話です。

 昨年の定例では、早めに昭和女子大に入り、会場地下にあるカフェでファン仲間の皆さんと情報交換したりしたのですが、今年はゆっくり出かけました。昭和女子大に着いたのは開演15分前の1345(ひとさんよんごー)です。

 正門前には演奏会の告知が掲示されていました。昨年より2時間早い開演です。

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 正門を入ると、なんだか大掛かりな工事が行われています。どうやら歩道の拡幅工事とそれに伴う街路樹の車道側への移設が行われているようです。

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 昨年はブルーシートに覆われ、残念な姿だった人見記念講堂は、工事も終わり、元の美しい姿を見せてくれています。やっぱりこのほうが気分も上がりますね。

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 パンフレットを受け取り館内に入ると、すぐに「いかづち」さん「潜水士」さんに遭遇しました。今回は到着が遅かったので、立ち話もそこそこに会場内へ。

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 ステージ上では荒木美佳さんがチューニングを終えるところでした。岩田有可里さんのチューニングはもう終わっちゃったのかな、姿がありません。ステージに近づき、今年の隊旗を撮影。いや、別に毎年同じ旗ですけど(≧∀≦)

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 誰もいませんが、ステージはこんな感じです。

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 会場内にブザーが鳴り響き、開演5分前を知らせてくれます。照明が徐々に絞られ、いよいよ演奏会が始まります。

 定刻になると、ステージ両袖から隊員のみなさんが登場、会場は拍手で包まれます。演奏服は、東音限定のタキシードタイプです。そして左袖から樋口好雄隊長が現れると拍手は一段と盛り上がります。いつもながら大人気ですね。

 第一部のプログラムです。

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 第一部の初っ端、コンサートマーチとして演奏されたのは、丁度1ヶ月後に迫った令和元年度自衛隊観艦式のファンファーレとテーマでした。以前の記事でもご紹介したとおり、この曲は、東京音楽隊のホルン奏者である藤吉正規3曹の作品です。ラッパ君が代の旋律を巧みに折り込み、聴く者の心を高揚させてくれる名曲だと思います。

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 海上自衛隊全音楽隊員に募集がかかり、応募のあった12曲の中から選出されたのだと、紹介がありました。素晴らしい才能ですね。

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 ここで、左袖から荒木美佳さんが登場すると、会場は大きな拍手で迎えます。今や誰もが知る東京音楽隊の顔になっていますね。いつものように「改めまして、皆さんこんにちは!」とご挨拶。感心させられるのは、演奏会の性格やその時々の国内外情勢に応じて、そのトーンを変えていることです。今回はテンションを抑え気味でした。台風15号で大きな被害を受けた千葉県の皆さまへの配慮であることは、そのあとに続いたコメントでわかりました。その中で、荒木さんには珍しくよく似た言葉の取り違えがありました。細部は省きますが、よく似ているけれど、全く逆の意味になってしまいます。すぐに訂正されましたし、会場も「それ、言い間違えそうだよね」という、一種和やかな雰囲気で受け止めていました。これには後ほど続きがあります。

 

 荒木さんの紹介による2曲めは、オーストリアの作曲家、フランツ・フォン・スッぺの『「美しきガラティア」序曲」です。「美しきガラティア」は1幕もののオペレッタですが、ジャック・オッフェンバッハの「美しきエレーヌ」に触発されて書きあげたこの曲は、ウィーンで初めてのオペレッタとなり、やがて彼は「ウインナ・オペレッタの父」と呼ばれることになります。良きライバルは不可欠ですね。

 序曲は、今から始まる歌劇全体のテーマを押さえつつ、期待を盛り上げてくれる楽曲ですから、どの曲も気分が上がりますよね。個人的には、躍動感溢れる「コウモリ」の序曲が好きです。

 さて、東京音楽隊の演奏はいつもながら素晴らしいものでした。1曲めのファンファーレに続き、気分を盛り上げてくれます。この曲では大川好さんのフルート、藤吉正規さんのホルンのソロ演奏が披露されました。

 記事に埋め込むため、東京音楽隊の動画を探しましたが、ありません。他の自衛隊音楽隊の動画も見つかりません。そこで、音楽隊との所縁も深い洗足学園音楽大学の動画を入れましたので聴いてみてください。

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 3曲めに演奏されたのは、1987年の吹奏楽コンクール課題曲の一つ「風紋」です。曲紹介の中で、音楽隊員だけでなく、会場にもいるであろう吹奏楽経験者にとって、吹奏楽コンクールに向けて練習を重ねた日々は良い思い出になっているとのお話がありました。吹奏楽に携わる方々は、コンクール課題曲という共通のテーマで繋がっているんだなぁと思いましたし、それらがよく演奏されるのは、やはり、吹奏楽経験者へのプレゼントという意味があるのだろうと思いました。

 さて、この美しい曲も、記事投稿時点では自衛隊音楽隊の動画が見つかっていませんでしたが、「作戦参謀」さんからのコメントで、大湊音楽隊による動画があることがわかりましたので、埋め込み動画を入れ替えました。とても印象に残る名曲だと思います。是非お聴きください。

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 曲紹介に併せ、荒木さんから、東京音楽隊の演奏活動についてちょっと紹介があり、「近いところでは、来週の日曜日、大相撲9月場所の千秋楽の表彰式の前に行われる国歌斉唱で、東京音楽隊が伴奏を努めます。また10月22日には天皇陛下の御即位正殿の儀が挙行されますが、パレードの際には東京音楽隊も沿道で演奏を行います。テレビにもちょっとだけ映るかも知れませんので、皆さんご覧になってくださいね」と語られる途中、会場からは感嘆の声が何度も上がっていました。

 

 さて、4曲めは、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの作品です。歌劇「リナルド」から「私を泣かせてください」、中川麻梨子さんの本格的なソプラノを、音響に優れたこのホールで聴けるのです。

 曲紹介の中で、荒木さんがヘンデルについて紹介されていたのですが、この大作曲家の作品が私たちの意外に身近なところで使われているというのです。「表彰式などで演奏される『得賞歌』です。」と紹介されると、樋口隊長がタクトを振り、東京音楽隊がそれを演奏します。お馴染みの曲ですね。ヘンデル作品とは知りませんでした(≧∀≦)

 それにしても、語りのツマにこのオーケストラを使っちゃうんですから、さすがは大物MCですね(^ ^) 「前列に座ってらっしゃる生徒の皆さんが喜んで聴いておられたのを拝見して、大変嬉しゅうございます」気品溢れるコメントでした。

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 そして、「私を泣かせてください」です。中川さんが登場する前から、会場全体に期待感が充満しているのがわかります。人見で中川さんの歌を聴いたことのある人は、もちろん一人もいません。そんな期待感のなか、中川さんが左袖から登場すると、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。演奏が始まります。太田紗和子さんのピアノ(というかチェンバロ?、ハープシコード?)のみの伴奏です。まず出だしで圧倒されます。力強さを秘めた繊細さ、そして溢れんばかりの情感。確かに歌姫です。コンサートホールでその声を拝聴するのは初めてですが、海上自衛隊が、三宅由佳莉さんに引き続き、この類稀な魅力溢れる歌手を獲得できたことの意味は決して小さくないと思いました。中川さんの歌唱の傍、ステージ左には男女4人のコーラスが編成されていました。遠目なのでよく見えませんでしたが、川上良司さんと荒木美佳さんを確認しました。

 この曲も自衛隊音楽隊の動画はありません。サラ・ブライトマンさんをはじめ、何人かの動画が上がっていましたが、聴き比べてみて、中川さんが歌われたイメージに一番近いと私が感じた、野々村彩乃さんの動画を貼っておきます。歌詞も、日本語訳も表示されますので、感情移入もしやすいと思います。心が洗われるような曲です、ぜひお聴き下さい。

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 歌い終えて、退場される際の中川さんの仕草が愛嬌たっぷりで可愛かったです。歌っておられる時とのギャップにやられた人も多いのではないでしょうか。横音ファンからは、「中川を返せ!」という声が上がっているに違いありません。

 

 5曲めの「エスプリ・ドゥ・コール」。タイトルはフランス語ですが、これは米海兵隊軍楽隊からの委嘱で、ロバート・ジェイガーが手がけた作品です。英語に訳せば「Spirit of corps/部隊の精神」となります。corpsはフランス語に起源を持つ英語で、部隊や軍団を意味します。米海兵隊のことを「マリンコー」とよく言いますが、英語表示では「Marine Corps」となり、このCorpsが、この曲のタイトルに使われているわけです。

 米海軍の公式行進曲は、海自音楽隊がよく演奏する「Anchors aweigh(錨を上げて)」ですが、組織上海軍に属するものの、独立軍種との気概の高い海兵隊の行進曲は「Marine Corps Hymn」です。聴いたことがあるでしょう? 映画などで海兵隊が登場する場面でよく使われています。

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 今回演奏されたのは、その「Marine Corps Hymn」ではありませんが、そのモチーフを曲中に織り込んだものです。直接的な旋律としては現れませんが、「あぁ」と思われるところがあると思います。米海兵隊と言えば、世界最強の勇猛な軍団です。何かあれば、とにかく真っ先に投入され、事態を掌握して後続部隊に引き渡すのが使命です。

 最も危険なところでしか戦わない部隊ですから、誇り高い軍団なのですが、その能力と士気を保つのは並大抵のことではありません。このような楽曲にも、海兵隊員の心を揺さぶり高揚させる意思が強く反映されていると思います。

 因みに、荒木さんの解説によりますと、作曲者のロバート・ジェイガーは若い頃、海軍に入隊し、海軍音楽学校で編曲などの指導に当たっていた経歴があるそうです。

 演奏が始まる前に、太田紗和子さんと岩田有可里さんが静かに左右の袖から退場されました。ピアノとベースを使わない曲なんですね。

 この曲も、自衛隊音楽隊の動画を見つけることはできませんでした。

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 第1部の最後を飾る6曲めは、リヒャルト・ワグナーの作品です。曲紹介の中で、荒木さんが、「ワグネリアンと呼ばれるワグナー作品の熱狂的なファンが世界中にたくさんいる」とおっしゃっていましたが、それはよくわかります。感動させてくれるというよりは、自分の奥底に眠ったまま気づかなかったネイティブな感情を呼び覚まし、引き出してくれるような、そんな楽曲が多いように思います。

 映画「地獄の黙示録」で注目された「ワルキューレの奇行」もそうですし、「ニュールンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲などは、煌びやかな神殿を見上げるような心持ちになります。

 今回演奏された「エルザの大聖堂への行列」は、曲全体に抑揚はありませんが、フルートとクラリネットによるとても静かで繊細な演奏から始まり、次第に音が厚みを増していって、最後は地の底から湧き上がるような壮大な音が天に抜けて会場全体を感動で包みます。素晴らしい曲です。

 ステージ上では、大川好さんのフルート、横野和寿さんのクラリネット、加茂政輝さんのオーボエなど多くのソロ演奏も披露されました。また、岩田有可里さんのコントラバスは、ピチカートを主用する演奏で、会場の後ろの方にいる私でも腹に響くような音を感じ続けることができました。

 この曲も自衛隊音楽隊の動画はありませんでしたので、再び洗足学園音楽隊大学の動画を載せます。是非感動してみてください。

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 第1部が終わって感じたことは、昨年とは全然違うということです。昨年の第一部はクラリネットの大御所・北村英治さんとのコラボで、ジャズをモチーフに展開されましたが、今年はカッチリとクラシック主体でまとめてきました。しかも、どの曲も、自衛隊音楽隊の演奏動画がYouTubeにアップされていません。音楽隊にとって処女地に分け入ったということなのでしょうか。それでいて、素人にも受け入れやすい楽曲ばかりが並んでいます。どのようなコンセプトで選曲がなされたのか、興味深いです。

 

(Intermission 15min)

 

 15分の休憩を挟んで、第2部の開幕です。

 まだ、だれもステージに現れていない状態で、荒木美佳さんが姿を見せました。なんだろう。荒木さんは、第一部冒頭での挨拶の際に言葉の取り違えをしてしまったことを謝罪するためにステージに上がられたのでした。「千葉県の皆様にご不快な思いをさせてしまいました。また、会場でお聴きになった皆様の中にも不快な思いを抱かれた方がいらっしゃると思います。本当に申し訳ありませんでした」

 会場は、「そんな、謝罪するようなことではないだろうに、でも、きちんとしているね」という受け止め方でした。私も、すぐに訂正したのだし、謝罪するほどのことではないと感じていました。でも、おそらくですけど、荒木さん自身が納得できなかったんだと思います。似たような言葉だから言い間違えても仕方ない、と言ってしまえば自分ではなくなる。きっとそんな思いだったのではないでしょうか。

 でも、会場が重くならないよう「実は、私自身千葉県出身なんです」と加えることで、会場は安堵の笑いで包まれ、再び和やかな雰囲気になりました。やっぱり、名MCですね。

 

プログラムは以下のとおりです。

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 7曲めは「翔べ!ガンダム」、メドレーで何曲か演奏されましたが、曲名がわからないので、タイトル曲だけ貼っておきます。2016年の東京マラソン応援で東京音楽隊が演奏した動画がありますので、そちらでお楽しみください。

 曲紹介の中で、荒木さんは、平成20年度の概算要求に防衛省が盛り込んだ「宇宙作戦隊」新編の話題にも触れ、「将来、私たちがガンダムに乗り宇宙を駆け巡るような時代が来るかもしれません」と話題を振っておられました(^ ^) 実際には人工衛星の監視などに当たる部隊が想定されているようですが、将来どのように発展していくのかは、誰にもわかりません。

 ところで、私の斜め前の席に座った男性は、おそらくガンダム世代なんだと思います。このメドレーが演奏されている間、体も頭もスイングさせながら気持ち良さそうに聴いておられました。やはり、子供の頃に大きな影響を受けたアニメの曲を聴くと気分が上がりますよね。私なら、「鉄腕アトム」「宇宙エース(星の炎に)」「鉄人28号(正太郎マーチ)」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」あたりでしょうか。同世代の方々は、ウンウンと頷いているかもしれませんね。若い方はご存知ないだろうなぁ(≧∀≦)

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 8曲めから、ジャズトランペッターの類家心平さんをお迎えしての合奏に入ります。曲目は、昨年9月のランチタイムコンサートと同じですので、動画はその時のものを埋めておきます。8曲めとなる「チュニジアの夜」、昨年の動画をみますと、最後のアドリブで引っ張る類家さんに、締めのタイミングを計りかねてちょっと戸惑う荒木さんや横野さんの様子が捉えられており、ライブ感溢れる動画になっています。今回の演奏でも、類家さんのアドリブが光りましたが、さすがは東京音楽隊、今度は戸惑うことなくきっちり合わせてきました。

 男女の睦言を表現しているのか、類家さんのトランペットは力強い演奏と、ため息を思わせる囁くような演奏の掛け合いを一人で演じます。凄いなと思いましたし、会場からも「これは参った」という驚きのざわめきが起きました。終演後に大喝采が起きたことは言うまでもありません。

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 ここで、荒木さんによるインタビューが行われました。

 「パンフレットのプロフィールにも書いてあるのですが、実は類家心平さんは、私たちと同じ海上自衛隊音楽隊の出身なんです」と紹介されますと、会場にはどよめきが起きました。みなさんパンフレット読んでないみたいですね。

 「そこで、ちょっとお話を伺ってみたいと思います。類家さんが、音楽隊からジャズトランペット奏者を目指された理由はなんだったのでしょうか」

類家さんはちょっと戸惑いながら、「私は6年間大湊音楽隊で勤務しました。今日は、諸先輩がたの前で演奏するので、なんだか参観日に親を迎える生徒のような気分です。音楽隊は、今日も第1部ではクラシック中心の演奏でしたし、今はジャズの演奏をしています。お聴きになっている方に伝わるかどうかはわかりませんが、両者の演奏方法は全く違うんです。それを事も無げにこなしている音楽隊に、私は強いリスペクトを抱いています。ただ、私の場合、どうしてもジャズの道を極めたいと言う強い欲求があったものですから、音楽隊を去り、自分の決めた道を歩んできました。でも、今こうして、樋口隊長にお声かけいただき、昔の仲間と一緒に演奏できることがとても嬉しいです」

訥々とした語りでしたけど、その思いがよく伝わりました。

 

 そして9曲め、1956年に交通事故により25歳の若さでこの世を去った天才トランペッター、クリフォード・ブラウンの死を悼み、その記憶を後世に伝えるため、ベニー・ゴルソンが作曲したものです。演奏技術のみならず、清廉で温厚な人柄が広く愛されていた事もあるのでしょう、この曲は現在に到るまで彼に対する追悼の意味で演奏される機会が少なくありませんが、ほとんどアレンジされる事なく、オリジナルのまま演奏されるのだそうです。そこまでの深い敬意を受け続ける存在なのですね。

 類家さんの、絞り出すような情感のこもったトランペットの響きが心を震わせますし、バンドの繊細な演奏も光ります。この曲でも、ウッドベースの刻む重厚な響きが終始曲を支えます。とても素敵な演奏でした。

 この曲も、昨年9月のランチタイムコンサートの動画を埋めて起きます。

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 さて、10曲め、再び中川麻梨子さんの登場となります。「ニューシネマ・パラダイス」。映画をご覧になった方も多いと思います。私ももちろん観ましたが、まさにいい映画ですね。爆発的な感動ではなく、心の奥底に染みる感動を与えてくれます。でも、一度沁み込み始めると、とめどなく想いが広がり、感動の大きさが後から襲ってくるような、そんな映画ではないでしょうか。

 中川麻梨子さんの豊かな声量が、誰もが時として抱く幼少期への切ない感傷を否応なく誘い出して止まないこの曲に、伊吹を与えていきます。遠景ですので表情は見えませんが、想いの丈が込められているのが十分に伝わります。

  この曲も、自衛隊音楽隊の動画はありませんし、もちろん中川さんの歌唱動画もありません。数ある動画を観比べてみて、これだな、と思ったのがスミ・ジョーさんのものです。ぜひご覧ください。

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 実は、もう一つ、私の心を捉えた動画がありました。生前の本田美奈子さんが日本語で歌われたものです。でも、私にはそれを選ぶ勇気はありませんでした。

 

 11曲め、葉加瀬太郎さんの「情熱大陸」からは、昭和女子大学附属中高吹奏楽部とのコラボフェーズに入ります。私の知る限り、3年連続となるこの企画、年々進化を続けているように思います。今年はどんな感じでしょうか。

 大勢の吹奏楽部の皆さんが拍手に迎えられながらステージに現れ、それぞれのパートに向かいます。すごい人数になりますね。合計すると100人くらいでしょうか。

 誰にもおなじみの曲ですし、ノリのいい曲ですので盛り上がります。曲が始まると、樋口隊長は早々にパーカッション席へ移動されました。この前にも何曲か、パーカスへ移動された曲がありました。本当に演奏が好きなんですね。

 この曲では、沼田紘之さんのトロンボーン・ソロ、藤沼直樹さんのトランペット・ソロも披露され、会場からの喝采を浴びていました。

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 そして12曲め、最後の演奏はZARD「負けないで」。誰もが知る名曲です。この歌から勇気や元気をもらったことのある方は少なくないはずですし、多くの方がカバーしています。今回この曲を歌ったのは、昭和女子大附属中高コーラス部の皆さんです。6名のコーラス部員がステージに登場しますが、ここに荒木美佳さんと中川麻梨子さんが加わって8名でのコーラスです。

 間奏では越水泰史さんのサックスソロが曲をグッと締めました。

 本当に、いつ聴いても元気の出る曲ですね。コンサートの締めにはぴったりではないでしょうか。ふさわしいコーラス動画がなかったので、独唱ですけど動画を貼っておきます。元気になってください。

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 演奏が終わったところで、樋口隊長への花束贈呈がありました。そして大喝采を浴びながら樋口隊長は左袖へ退場されますが、アンコールを求める拍手は鳴り止みません。

 そこへ荒木美佳さんが登場、「盛大な拍手にお応えして、もう1曲お送りします」と仰ると、会場はわきあがります。「お送りするのは、この演奏会に相応しい1曲、昭和女子大学附属高等学校、中学校校歌!」。これも3年連続になりますが、やはりご存知ない方も多く、会場内はどよめきます。指揮は、吹奏楽部顧問の先生です。

 そして、吹奏楽の演奏に合わせてコーラス部の皆さんが校歌を高らかに斉唱して、爽やかな空気で会場が満たされました。残念ながら、同校校歌の動画をいくら探しても出てきませんでしたので、ここは動画なしです。

 

 更に鳴り止まない拍手に応えて、樋口隊長が再び登場、右手の人差し指を立てて、「もう1曲ね」とアピールされました。荒木さんが「ルパン三世のテーマ」と紹介されたとき、ちょっと戸惑いました。おそらくこれが最終曲だと思われるのだけれど、今回の演奏会では「軍艦」やってないよね。このまま終わっちゃうのかな、これがサプライズ? なんとなくマイナスイメージのサプライズだな、そうなのかな。疑心暗鬼です。

 とはいえ、ルパン三世のテーマです。曲が始まってしまえば、気分は上がりっ放しです。途中、類家心平さんもソロで参加されました。面白かったのは、類家さんがソロ演奏をしている後ろから、トランペットの谷口愛奈さんが近づき、背中をチョンチョン、「代わって」と要求します、類家さんが「お、おぅ」と脇によけると、谷口さんのソロ演奏です。気持ちよく吹いた後は「ありがとうございました」と挨拶して席に戻って行きました。楽しい演出でした(╹◡╹)

 この曲でも、ウッドベースが心地よく鳴り響きました。この曲でも、というか、ベースが一番存在感を発揮したのがこの曲ではなかったかと思います。今回は岩田有可里さんにご挨拶する機会はありませんでしたが、演奏を十分に堪能することができました。

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 ルパン三世のテーマが終わると、また、「軍艦」はどうした? という疑問が湧いてきます。「軍艦」を楽しみに来ている人もたくさんおられるでしょうに、どうケリをつけるんだろう。

 と思っていると、中高吹奏楽部のメンバーが更に両袖から続々とステージに現れます。もう1曲やるんだ。でもまさか、生徒さんたちと一緒に「軍艦」はないよね。どうなるの?

 樋口隊長が指揮台に上がり、ステージに向かいタクトを構えます。両腕が上がった瞬間「あ、軍艦だ」と直感しましたが、でもまさかとの思いは残っています。

 でも、ステージから繰り出された音はまさに、まさかの「軍艦」でした。いや、驚いたなんてものではありません。生徒さんを交えた編成でこれをやるか。この驚きを記録に残したくて、フェイクではありますが動画をしつらえました。東京音楽隊の音源に、昨年の合奏後の写真を組み合わせて、会場の雰囲気だけでも作ってみようと思ったものです。動画の説明欄にも詳しく、「これはフェイクだよ」と書きましたので悪しからず。

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 やっぱりね、という感じです。数日前、間も無く定例演奏会だね、という記事を書いた際、どんなに予想しても「そう来たか(≧∀≦)」と思わされるのが落ちだから、あれこれ考えないで楽しみましょう、と書きました。ただ、生徒さんたちとのコラボは最後にくるから、軍艦は最初に演奏するだろうとも書きました。その、鉄板予想すらこんなに木っ端微塵にやられちゃうんですから、東京音楽隊は手に負えません(≧∀≦)

 いかがでしょうか、演奏会の雰囲気が幾らかでも伝われば幸いです。