あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

嬉しかったこと@防衛省

 昨日、現役の頃最後に所属していた部隊の創立記念祝賀会に参加するため、防衛省を訪れました。せっかく訪れる機会ですので、本題に入る前に防衛省内のことを少しだけ紹介してみようと思います。

 2年ほど前にも、同じような機会に「防衛省の敷地内ちょっとだけ紹介」という記事を書きました。

retcapt1501.hatenablog.com

 今回は、防衛省の本丸であるA棟と、中央通りを挟んで向かい合う「厚生棟」をちょっとだけご紹介します。

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 ↓↓↓A棟側から撮影した厚生棟です。敷地内に林立する高層ビル群の中で、ひときわ背の低い建物ですが、職員のための厚生関連機能が集約されています。

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 1階には防衛省職員共済組合の本省支部の他、大食堂(通称「人民食堂」)と、共済組合直営のレストラン?、それからコンビニっぽい売店などがあります、というかコンビニだったかな?人民食堂は、各種定食類が比較的安価で提供されていますので、お昼時には大変混雑しますが、何しろフロア面積が大変広く、夥しい席数ですので、何人かのグループで一緒に食べようとか、そんな拘りさえなければ、席を見つけるのはそれほど難しくはありません。

 上階には、図書室や談話室、カウンセリングルーム、ウェイトトレーニング場などがあったと思います。3階(だったかな?)は医務室ですが、診療の他、職員の定期健康診断も一手に行なっています。

 厚生棟の地下には、書店や理髪店、クリーニング店等があるほか、コンビニやファーストフード店も出店しています。今時は、多くの基地や駐屯地も同じような感じです。

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 厚生棟地下に防衛省店を出しているのはファミリーマートですが、店内には自衛隊グッズコーナーがあります。そして目を転ずれば、吉野家防衛省店があります。

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 私が退官した頃は、ここに「サブウェイ」があり、私もよく利用していました。でも、入門制限が厳しい防衛省を訪れる人は限られているでしょうし、そもそも職員は食事時にしか来ないでしょうから、ここでファーストフード店を維持するのは大変じゃないのかな、と以前から思ってました。余計なお世話ですけど(≧∀≦)

 ちょっと早めに防衛省に到着したものですから、懇親会場に向かう前に、久しぶりに厚生棟にお邪魔してみた次第です。

 懇親会場はA棟18階のスカイレストランですので、地下通路を通ってA棟に入り、エレベーターで上階を目指します。

 で、ここからが本題です。懇親会場で嬉しいことがありました。

 私が最後に所属していたのは、陸海空統合の部隊でしたから、会場には3軍種の自衛官が様々な服装で入り乱れていたのですが、一人の陸上自衛官が私のところへ歩み寄り、「お久しぶりです、その節は色々とお世話になりました。私のこと覚えてらっしゃいますか?」と切り出したのです。記憶が蘇るのに一瞬の間が有りましたが、彼のことは印象深く覚えています。

 ある時、私は熊本県の建軍駐屯地にある隷下部隊の定期秘密保全検査のため、検査チームを率いて出向いたのですが、その時の現地部隊主務者が彼でした。まだ若い2等陸尉でしたが、前評判通りのしっかりした仕事ぶりが光りました。

 2日間にわたる検査終了後の懇親会の席で、彼とはじっくり話をする機会があったのですが、自分なりに考え抜いた確固たるポリシーに基づいて任務と向き合っていることがよくわかりました。家庭の事情で高等学校に進むことができなかった彼は、非常に優秀な隊員であるにも関わらず、そのことが負い目になっているようでした。

 彼のように、自分の頭で考えて物事を処理していける人間は、地方の部隊にいても、もちろん頭角を表すでしょうが、早い段階で中央勤務を経験するべきだと思いました。格段に視野が広がるからです。そして、その考えを彼に伝え、勤務の希望を出すことを勧めました。また、今は通信教育で高等学校や大学を卒業することもできる、仕事をしながら学歴を積むのは大変なことではあるけれど、もし負い目を感じているのなら、今のうちに挑戦しておかないと、将来必ず後悔することになるよ、と言うような話をしたと思います。

 当時の彼は、ちょっと切羽詰まったような表情が垣間見えたのですが、昨日、私の目の前の彼はとても晴れやかな表情をしていました。「あのあと、中央勤務の希望を出していたのですが、運よく希望が叶い、今こうして市ヶ谷勤務をしています。今日、お見えになると知り、真っ先に報告しようと思っていました。それから、高校にも入学しました。私は今高校1年生です」と満面の笑顔で報告してくれたのです。

 胸が熱くなりました。私と彼が合間見えたのは、わずか二日間だけです。言葉を交わしたのは、全部合わせても1時間程度ではないでしょうか。それでも、そこから自分が何をなすべきかを改めて考え、そして実行し、着実に自分の人生を切り拓いている彼の姿に感動したのです。

 「嬉しい報告をありがとう」と、力一杯の握手を交わした彼の両肩には、1等陸尉の階級章が輝いていました。

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