あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

痛恨の演奏会(T_T)

 

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 昨日、「横須賀自衛隊ふれあいフェスタ2019」に行ってまいりました。横須賀市京急汐入駅前にあるショッパーズプラザ(イオン・モール)で、1100(ひとひとまるまる)からと1400(ひとよんまるまる)からの2回、海上自衛隊東京音楽隊の演奏会を楽しませていただきました。

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 会場は、ショッピングモールの2階中央にあるイベント広場のようなところで、最上階の天井・明り取りまで吹き抜けという、音楽演奏には向いてなさそうな場所です。

 ショッピングモールでの演奏会を聴くのは初めてでしたが、バンドとの距離感がほぼゼロという恵まれた環境は、何とも言えない一体感を与えてくれます。

 ただ・・・

 早めに会場入りしたおかげで最前列中央の席に座ることができたのですが、音楽隊の皆さまとの距離が近すぎて、スマホ動画屋の私は、どうやって全体を画面の中に収めればいいのか途方にくれました。

 そこで、午前の部ではソロパートの方々にフォーカスしたスマホ縦撮り、午後の部ではで横撮りで、それぞれフル動画を撮影することに致しました。

 まずは、午前の部の縦撮りフル動画をご覧ください。スマホ縦撮りでの演奏会フル動画というのはあまり見かけませんが、このような至近距離での撮影の場合、ソロパートの部分では却って臨場感があるような気がします。いえ、決して言い訳ではございません、まずはご覧ください(╹◡╹)

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 いかがでしたでしょうか。

 演奏曲目をおさらいしてみましょう。

 冒頭は、米海軍の公式行進曲「錨を上げて(Anchors Aweigh)」のスペシャルバージョン。昨年12月に亡くなられたジャスギタリストの山木幸三郎さんは、東京音楽隊の作曲講師もされていたそうですが、この曲はその山木さんのアレンジによるもので、東京音楽隊からの敬意と感謝の気持ちを込めての演奏となりました。

 前半の指揮は、館山(だてやま)康弘・3等海尉です。昨年12月に行われたトリフォニーホールでのハートウォーミング・コンサートでは、前半のMCを務め、男性コーラスのメンバーとして美声も披露して下さいましたね。

 

 2曲目は、ジブリアニメ「魔女の宅急便」から「海の見える街」でした。

 この作品が世に出てからもう30年にもなるんですね∑(゚Д゚) それほどの時を経てもなお、作品も楽曲もいささかも色あせることなく愛され続けているところに、ジブリ作品の制作に注がれる心血がどれほどのものであるかを感じ取ることができます。

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 東京音楽隊が得意とするボサノババージョンでの演奏でしたが、ソロパートのみなさんも輝いていましたね。この曲のソロパートを紹介してみたいと思います。

 

 最初のソロは、サックス奏者の越水泰史(こしみず・たいし)さんです。

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 今回はサックスではなく、ヴェノーバ(Venova)という珍しい楽器です。誰もが学校の音楽の授業で演奏した経験があるリコーダーのように吹けるのに、まるでサックスのような音が出ます。2年ほど前、ヤマハが販売を開始した新しい楽器です。こういうものをちゃんとフォローしているんですね。いつもながらの素晴らしいソロを披露して下さった越水さん、物静かな雰囲気(本当のところは分かりません ^^;)ですけど、渋い存在感を感じさせてくれますよね。プライベートでの演奏活動も含め、個人的に注目しています。

 

 続いてピアノソロ、もちろん太田紗和子さんです。

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 実はリハーサル前のマイクテストの時から観ていたのですが、本当に惚れ惚れする音色です。こんな素敵なピアニストがいる東京音楽隊って凄いんだなぁと改めて思います。動画では、演奏している姿を写すことはできませんでしたが、昨年7月7日の陸海空合同演奏会でのステージ中央でのラプソディ・イン・ブルーの衝撃を思い出しながら流麗な音色を楽しませて頂きました。

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 因みに、演奏後のソロプレイヤー紹介の際、「ピアノ、太田紗和子1等海曹」と聞き、え? 1月1日のご昇任ということになりますが、知る由もなく驚くとともに、何とも言えず嬉しい気持ちになりました。上級海曹としての益々のご活躍を祈念致します。

 

 そして、目黒渚さんのフルートソロです。

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 古巣横須賀での演奏会、横須賀音楽隊時代からのファンがたくさん来られていたと思います。そんな皆さんの前での美しい演奏でした。横須賀在住で、横須賀音楽隊時代から目黒さんとは顔なじみの方が「なんか、東京音楽隊に行ってから、雲の上の人になっちゃったみたいで声掛け辛いって、渚さんファンの息子に言ったら、お父さんだらしないな、僕なんか平気だよと言われました。小学生のくせに生意気言いやがって」と面白おかしく話して下さいました。東京音楽隊に転属になったからと言うよりは、目黒さんご自身の放つオーラが格段に強くなっているからではないでしょうか。東京音楽隊への移動が契機になったのかも知れませんが、その優雅な存在感は半端じゃないですね。

 

 最後は、沼田紘之さんのトロンボーンソロでした。

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 沼田さんのソロについては、昨年9月のランチタイムコンサート以来(私にとっては)です。ランチタイムコンサートの記事でもご紹介したとおり、陸海空音楽隊員による金管五重奏ユニット「TAX」でもご活躍されています。陸海空音楽隊には、軍種を跨いだ合同ユニットが結構あります。音楽隊員といっても、軍種が違えば文化の壁、習慣の壁、言葉の壁があり、完全に理解し会えるものではないと思います。それでも、音楽という共通のステージで一つのものを創り上げようという自主活動は、統合運用のお手本のようなものではないでしょうか。

 ソロ演奏が終わった後のこの笑顔が爽やかですね。

 

 ソロではありませんでしたが、先任伍長、加茂政輝さんのオーボエ

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 以前から、加茂さんのことが気になっていたのですが、その表情からも、演奏する姿勢からも、演奏家としてだけではなく人間としての深い味わいが感じられ、先任伍長識別章がよく似合う方だと思います。きっと、父親的な存在として隊員の皆さんをよくまとめ、樋口隊長を支えておられるに違いありません。今回、動画撮影中に思わず釘付け撮りをしてしまいました。

 

 

 次に演奏されたのは、カーペンターズのナンバーから「青春の輝き」でした。カーペンターズは、米国の兄妹デュオで、私が中学生だった1970年代に世界中を魅了したユニットです。そのヒット曲の数々は、今でも様々なシーンで使用され、多くの人々に親しまれていますね。

 この曲のオリジナルを聴いてみましょう。歌詞もメロディも、本当にいい曲です。

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 さて、東京音楽隊の野外演奏会などでも何度か演奏されたことのあるこの曲ですが、今回は横須賀市出身のサックス奏者・在川詩織さんをフィーチャーした、地元の皆さまへのサービス・プログラムでした。

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 やはり、地元出身の隊員が活躍する姿を見るのはとても嬉しく、誇らしいものですよね。ご家族の方もきっと来られていたのではないでしょうか。

 リハーサルの時、在川さんの左上腕部に装着された階級章が「赤色」ではなく「金色」なのに気づきました。1月1日付で3等海曹に昇任されていたんですね、おめでとうございます。

 昨年、東京音楽隊の演奏会に何度も足を運ぶ機会がありましたが、在川さんのサックスソロが結構多く、今後の東京音楽隊を担う新進気鋭のプレイヤーとして期待されているのを感じましたし、まだお若いのに堂々とした演奏ぶりが光っていました。

 そんな在川さんですが、この曲では最初から最後まで、スタンドマイクの前でのソロ演奏ですし、客席の最前列からは1メートルあるかないかの距離感ですから、流石に緊張されているような気がしました。

 それでも、いつものように素敵な演奏を聴かせてくれましたし、終演後の、ちょっとホッとした笑顔が微笑ましかったです。

 気になるのは、以前はソロ演奏が終わると、客席に向かって手を振ってご挨拶されていたのですが、最近はお辞儀だけになってしまいました。私は、手を振る在川さんの姿をとても清々しく思っていたので、何となく寂しい気がします。まぁ、年寄りの呟きです(≧∀≦)

 因みに、演奏会が終わった後、在川さんにご挨拶する機会があり、ソロ演奏が素晴らしかったことや、ご昇任への祝意をお伝えすることができました。今後益々ご活躍されることを祈っております。

 

 続いての演奏は、横須賀市出身の歌手・山口百恵さんの代表曲とも言える「いい日旅立ち」です。昨年12月18日に、やはりすぐ近くの横須賀芸術劇場で開催された防衛セミナーでの演奏会プログラムにも入っていたこの曲、今回も三宅由佳莉さんの歌が披露されました。

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 リハーサル前に、何か打ち合わせのため右袖から、左袖にいる川上良司さんのもとへ、私の座る最前列の目の前をすり抜けるように通って行かれた際、客席に笑顔を振りまく姿はいつも通りなのですが、どこかハッとさせられる、別人のような雰囲気を感じました。髪が長くなっているせいでしょうか。最近、額を覆うような髪型もあまりされなくなりましたし、新しいイメージ作りをされようとしているのかも知れませんね。

 MCの川口3曹が曲紹介を始めてすぐ、何やら右袖の方に存在感を感じてスマホを振ると、すでに三宅由佳莉さんが待機されていました。イントロが始まり、右袖から静々と歩を進める姿は、三宅さんならではの雰囲気を醸し出します。

 いつも思うことですが、どんな楽曲でも、その歌の世界を十分咀嚼してその中に身を置き、全身でそのテーマを表現されようとしていますよね。今回、本当の目の前でその歌い方や身振りを拝見して、指先まで行き届いた表現ぶりにただただ驚嘆しました。

 そして、歌い終えた後、歌の世界から戻って浮かぶ笑顔と、本当に美しいお辞儀に心を洗われる思いがしました。こういう挙措動作の一つ一つが、多くの国民にとても良い影響を与えているに違いないと思います。ありがとうございました。

 

 通常の演奏会ならば、「いい日旅立ち」を最終曲と紹介して、ここでアンコールへと進むのだと思いますが、このイベントではアンコールなしの調整が行われているのかも知れません。防衛大学校吹奏楽部の演奏会でも、「アンコール!」がかかったにも関わらず、一切応えることなく終わってしまいましたから。

 さて、三宅さんへの拍手が続く中、樋口隊長がもう1曲というジェスチャをして、アンコールへの対応っぽく演出されました。

 そしてステージ左奥の方へ「どうぞ」という感じで手を差し出した瞬間、ピアノの音色が奏でられ始めました。太田紗和子さんによる「幻想即興曲」です。数あるショパンの名曲の中でも大変人気のある曲で、聴いたことのない方はおられないでしょう。

 リハーサル前のマイクテストで「クラシックを」とのリクエストの際にも、この曲の触りすら演奏されませんでしたので、全くのサプライズでした。演奏する姿が見えないのは少し残念でしたが、素晴らしいという言葉以外浮かんできません。これほどのピアニストが海上自衛官の制服に身を包んで国防の一旦を担っていること自体、奇跡のようなものですね。

 

 そして、川口MCが「そろそろお終いの時間が近づいてまいりました」と最終曲である自衛隊行進曲メドレーの紹介を始めました。やはり、アンコールなしでとの調整があったのですね。最後までプログラム曲、途中に1曲サプライズ、という建前になっていました。

 

 行進曲メドレーは、先日の静岡音楽祭で最後に演奏されたものとおそらく同じなのだと思います。陸自行進曲が「陸軍分列行進曲」ではなく「凱旋」なのはなぜでしょう。

 この後行われた防衛大学校吹奏楽部の演奏会では、「陸軍分列行進曲」が演奏されたのですが、その説明で、陸軍を代表する行進曲と言いつつ「現在では警視庁などの観閲式の際に使用されています」と紹介されていました。「はぁ?」と私は思いました。警視庁も使ってるけど、その前に中央観閲式でも陸自部隊の行進で使われているし、そもそも防衛大学校内で行われる観閲式や月例パレードでも使ってるだろ。

 なんか変ですよね。陸軍分列行進曲を敢えて無視するような流れが自衛隊の音楽隊にあるのでしょうか。不思議です。

 陸軍分列行進曲の背景は分かりませんが、わが「軍艦」は揺るぎなく海上自衛隊の行進曲として演奏されました。やっぱり気分が上がります。素晴らしい曲です。本家本元・東京音楽隊の演奏による「軍艦」が最高ですね。

 

 ということで、わずか30分と言いながら、とても充実した演奏会でした。

 今回の演奏会では、太田紗和子さん、在川詩織さんの他に、トランペット奏者の谷口愛奈さんがご昇任されているのを確認しました。改めておめでとうございます。

 

 これだけ素晴らしい内容だったのに、なぜ「痛恨の」演奏会なのか。

 実は、1400からの演奏会のことなんです。

 午後の部は、なんとか東音の全体が収まるように動画撮影したいなと思い、2階から撮ろうか、袖口から撮ろうかとあれこれ、試して見ましたが、スマホ撮影の場合、距離が離れるとどうしようもない動画になってしまいますので、そこは諦めて、午前中と同じ席で横長動画を撮ることにしました。

 演奏プログラムは、1100からのものと同じですが、午前とは違う趣の動画にしたいなとあれこれ工夫しながら撮影を続けておりました。太田紗和子さんの「サプライズ」演奏も終わり、最後の行進曲メドレーのところで、度肝を抜かれるようなサプライズがありました。陸自行進曲「凱旋」の指揮が終わりかけたところで、樋口隊長が右袖の方に向かって、おいでおいで、と手招きします。「え?」と右にスマホを振ると、三宅由佳莉さんが小走りに近づいてきます。「え?え?」 なんと、樋口隊長は三宅さんにタクトを渡し、指揮をしろと言うのです。すごい場面です。しかも、私の席の目の前です。タクトを右手に、リズミカルに左右にスイングしながら空自行進曲「空の精鋭」を楽しそうに指揮する三宅由佳莉さんの後ろ姿が目の前に、そしてスマホのファインダーの中にあります。やがてこちらを振り向いた三宅さんは、満面の笑顔で観客に手拍子を求め、上の階の皆さんに手を振ってご挨拶。そしてまた、バンドの方にむきなおり、引き続き楽しそうにタクトを振るのです。この席を離れなくてよかった(╹◡╹)スマホのファインダーの中の三宅さんを見ながらそう思いました。

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 毎回必ず何かサプライズが用意されていますが、これにはやられました。観客席も大興奮です。素晴らしい、素晴らしすぎる。それだけに痛恨です。

 なんと、この動画、撮れてなかったんです。撮影中に指が撮影中止ボタンに触れたらしく、全く録画されていませんでした。スマホ動画屋のこれが大きなリスクですね。

 あれが撮れていれば、至近距離での三宅さんの楽しそうな指揮ぶりを皆さんにご覧に入れることができただろうに、残念でなりません(≧∀≦)

 と言ってみたところで、撮れてない動画がどこかから出てくる筈もないので、すっぱり諦め、他の方がそれこそ2階から摂ってくださった動画を貼っておきます。本当に楽しそうな三宅さんを見ているとこっちまで幸せな気分になります。 

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 と言うことで、今回はこれまで。

 色々、サイドストーリーもありましたので、逐次スピンオフ記事として上げていきます。そちらもお楽しみに。