あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「自衛隊音楽まつり」今年はどんな?(その1)

 昨日、「自衛隊音楽まつり」について、ちょっと外した感じて記事を書きました。今日は、予想される今年の音楽まつりの様相について考えてみたいと思います。

 音楽まつりは、言うまでもなく防衛省自衛隊の一大広報イベントですから、あまり奇抜なことや奇をてらったことはできませんが、毎年、何がしかのサプライズ演出があって、私たちを楽しませてくれます。

 基本の流れを押さえてみましょう。

 まずは、オープニング演奏。これは陸海空3自衛隊の音楽隊による合同演奏ですが、毎年、どんな趣向が凝らさるのか、多くの方が注目しています。

 昨年は王道の「ツァラトゥストラはかく語りき」でしたが、一昨年は「アフリカンシンフォニー」で、三宅由佳莉さんの迫力のパフォーマンスが光りました。

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 オープニング演奏が終わると、陸上自衛隊第302保安警務中隊による「オープニングセレモニー」が行われます。同中隊は、陸上自衛隊の一部隊ではありますが、国家の儀仗隊として、我が国を訪問される国賓に対し迎賓館で行われる歓迎式典で儀仗を行います。音楽まつりのオープニングセレモニーは、その儀仗を披露する場ともなっています。よく訓練された斉一な動作は、それだけで一つの作品と言ってもいいくらいです。

 行事の中の位置付けとしては、会場背面から旗衛隊に守られながら登場し、正面中央に占位する国旗に対し着剣捧げ銃(ちゃっけん・ささげつつ)を行うということになります。着剣捧げ銃とは、小銃の筒先に銃剣を装着した状態での捧げ銃で、最高位の敬礼です。会場で、あるいは動画でご覧になる際、輝く銃剣にもご注目ください。普通の銃剣は302保安警務中隊の銃剣のように輝いてはいませんけど(╹◡╹)

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 先日行われた中央観閲式でも、観閲部隊が国旗に対し捧げ銃の敬礼を行う前に、観閲部隊指揮官が「付け剣(つけけん)!」の号令をかけ、全部隊が腰に刺した銃剣を抜き、銃の筒先に装着していましたね。捧げ銃が終わると「取れ剣(とれけん)!」の号令で銃剣を外し、腰の鞘に収めます。その動作も斉一なので見応えがありますね。

 さて、302保安警務中隊ですが、昨年の音楽まつりで新制服のお披露目がありました。様々な反響があるようですが、私は最初「楯の会か」と思いました。若い方々には馴染みのない名前かもしれませんが、作家であり愛国者でもあった三島由紀夫氏が率いた「楯の会」は、私の年代以上の方々には強烈な記憶として残っています。この話は、また別の機会に書くことにしますが、両者の制服を見比べると「なるほど」と思われるのではないでしょうか。まぁ、軍服というものはみんな似ているとも言えますが。

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 302保安警務中隊の隊員の左腰に装着されているのが銃剣です。鞘に収められていますので、銃の筒先には銃剣はありませんよね。 

 そして、儀仗隊の捧げ銃と同時に「君が代」が吹奏され、観客席も含め会場全体で国歌斉唱が行われます。最近では、声を出して君が代を歌う機会などないでしょうから、会場を訪れる方は思い切り歌ってくださいね。

 オープニングセレモニーは、ある意味儀式ですから、毎年同じです。と言いますが、変わってもらっては困ります。

 ここからが、音楽まつりの本番ということになります。出演部隊は、陸海空のセントラルバンドであり、メインキャストである陸上自衛隊中央音楽隊海上自衛隊東京音楽隊航空自衛隊航空中央音楽隊に加え、陸上自衛隊の5個方面音楽隊のうち2個方面音楽隊、防衛大学校儀仗隊、全国の各部隊で自主活動を行なっている太鼓チーム、そして在日米軍の軍楽隊、加えて毎年いずれかの国の軍楽隊が招待されています。これまで、準同盟国であるオーストラリアや準同盟国になりつつあるインドやフィリピン、また王族同士の交流も深いタイ王国、お隣の韓国などの軍楽隊が出演しています。今年はどの国の軍楽隊が招待されているのでしょうか。これも一つの見どころです。

 音楽まつりは、毎年テーマを掲げています。昨年であれば「ONE」、一昨年は「音の力」でした。その時々の国内外情勢や自衛隊の置かれた環境などからテーマが設定されるのだと思います。そしてそのテーマを掘り下げたいくつかのサブテーマごとに「章」が設けられ、各章に振り分けられた出演部隊が、それぞれの章のサブテーマに沿った演奏を行うことになります。今年のテーマは「挑戦 CHALLENGE」です。どんな「章」構成になるのか、その中でそれぞれの出演部隊がどんな演奏を繰り広げるのか、本当に楽しみです。

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 各出演部隊ごとの単独演奏の他に、陸海空の合同演奏プログラムがいくつか準備されているはずです。その一つがフィナーレです。

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 参加全部隊が勢揃いし、合同演奏を行いますし、陸海空の歌姫が前に並んで歌を披露してくれます。場合によっては他の隊員や外国軍楽隊のヴォーカリストも加わります。

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 演奏が終わると全部隊が左右の袖から整然と退場していくのですが、ごく一部の隊員が残り、最後に小さな心温まる演奏を披露して会場に感動の余韻を残します。

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 フィナーレの最後の最後に、どんな感動の仕掛けがあるのか、これもまた見所の一つなんです。

 そして本当の最後は、最後まで指揮していた陸海空いずれかのセントラルバンドの隊長が赤絨毯の花道を歩み、途中で立ち止って回れ右、場内に挙手の敬礼をして、再びむきなおり退場して幕となります。昨年は、陸自中央音楽隊の樋口隊長がフィナーレの指揮をされました。

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 さて、昨年の音楽まつりを主に題材として、音楽まつりの流れを見てきました。

 大きな流れ自体は毎年ほぼ同じですが、それぞれの中身が大きく違うのです。特に昨年は随分趣が異なるなぁと思いました。

 まず、各セントラルバンドの単独演奏の際、それぞれの歌姫は参加していません。他方、陸自中部方面音楽隊の単独演奏の際には、鶫真衣さんが出演し、歌声を披露されていました。ところが、フィナーレには鶫さんが出演していません。

 セントラルバンドと地本の音楽隊を完全に区別して扱っているという感じです。とても整然としているし、美しい演出に筋は通っているのですが、なんというか、なんとも言えない不完全燃焼感が残りました。

 後に知ったのですが、音楽まつりの演出は部外委託されていて、昨年は従来とは異なる企業が落札したのだそうです。だから演出が悪かったと言いたいのではありません。素晴らしい演出だったと思います。

 舞台演出というのは、演出側が演者、特にメインキャストである3つのセントラルバンドの特性やファンが喜ぶツボを十分に把握していないと大変難しいのだろうと素人ながら思うのです。その意味で、昨年落札した企業の勇気には拍手を送りたいと思います。でも、やはり意気込みだけでは超えられない部分もあったのだと思います。

 特にファンが喜ぶツボについては、自らがファンとして長くこのイベントに付き合っていないと、なかなかわからないんじゃないでしょうか。

 ちょっと長くなってしまいましたので、ここで一旦区切らせていただき、残りは明日投稿したいと思います。