あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「まるで戒厳令じゃないか!」

    石原慎太郎さんが東京都知事をされていた時代、様々軋轢もあったのでしょうし、勇み足的なことも少なくなかったかもしれません。

f:id:RetCapt1501:20180520232344j:plain

 でも、政治家というものは、理念も大切でしょうが、今そこにある課題に、具体的な答えを出していくのが使命だと思います。その意味で、いわゆる「タブー」とされているために、合理的な理由もないまま着手されることのなかった事業に是々非々の態度で臨まれたのは素晴らしいことだったと思います。

 防災対策に関して、自衛隊を含む関係機関との連携を平素から整えておくことが重要だとの認識のもと、災害対策担当参与に志方俊之帝京大学教授(元陸上自衛隊北部方面総監・陸将)を起用されたのもその一環です。

f:id:RetCapt1501:20180520232402j:plain

 志方元陸将は、北部方面総監(北海道に展開する4個師団(当時)を基幹とする北部方面隊の指揮官)時代に、北部方面隊緊急医療支援訓練「ビッグレスキュー91」という、方面隊レベルでは初となる防災訓練を敢行された方です。その2年後に発生した、北海道南西沖地震では、その成果が遺憾無く発揮されました。

 私が統合幕僚会議事務局に勤務していた頃、退官されたばかりの志方さんが、よく訪ねてこられたのを覚えています。「つい最近まで陸将だったのに、全然偉ぶらない人だなぁ」とは思っていました。

 後に、私が陸上自衛隊の学校で過程脅威を受けた際、講話をしていただく機会があったのですが、心底「頭のいい人だな」と思いました。お勉強のできる人ならいくらでもいますが、自分の思考を、誰にでもわかるように解説できる人はごくわずかしかいません。志方さんは、そんなごくわずかな人の一人であり、しかも退官してもなお、武人たるの気骨を微塵も損なわず、さらにはユーモアに富んだ語り口調の中に小さな棘のような皮肉を折り込んで聞く者の意識を刺激するという、実に魅力的な方でした。

 要は、見えているんです。今何が問題で、何をなすべきかということが。

 そんな志方さんは、1999年の12月に東京都災害対策参与に就任された翌年の9月に、「ビッグレスキュー東京2000」を、石原都知事の指揮下で執行されました。

 この演習は、自衛隊のみならず、NTT、東京電力東京メトロなど、大規模災害時にキーアクターとなるであろう主要な公共機関をも巻き込んだ大規模なものでした。

 我が国における東京都の位置付けを考えれば、そのような現実的な演習というものが必要であることは明らかですが、「タブー」と「先例主義」により、それまで行われたことがなかったのです。

 机上演習ではなく実動演習ですから、陸上自衛隊の厳つい車両が銀座の街角に展開するようなシーンもありました。

f:id:RetCapt1501:20180520232941j:plain

 何の番組だったかは忘れましたが、このシーンを見て「まるで戒厳令じゃないですか!」と仰る代議士先生の発言を聞き、「何言ってんの、この人?」と思ったのを覚えています。可笑しいやら、呆れるやら、ある意味腹立たしいやら、何とも複雑な心境になりました。

 まず第一に、現在の日本に「戒厳令」なる制度はありません。

 仮にこの先生がそのことをご存じなく、「この訓練は、防災訓練に名を借りた戒厳令の訓練ではないのか」と仰っていたとするなら、国政に関与する代議士としての資質を疑われても仕方ないと思います。国家の根幹に関わる制度の有無をご存知ないということになるからです。

 でも、さすがに代議士先生がそのようなことをご存知ないとは思えないのです。

 もしかしたら、銀座の街を軍用車両が走行している画像を見て、「映画などで見る他国の戒厳令下の状況にイメージが似ているね」という感想を述べたのかも知れません。しかし、そのようなものは、小学生レベルの発想であって、国政の一翼を担う代議士先生が公共の電波を使って発信するようなものではないでしょう。

 だとすると、全てを分かった上で、このような映像を奇貨として、自衛隊石原都知事のイメージダウンを図るため、意図的に「印象操作」を行ったとしか考えられないのではないでしょうか。

 そのようなことが、日常的に行われているのが、今の日本です。

 全てのことを、自分の頭で考えるようにしなければ、姑息な「印象操作」の餌食になりかねないと思います。気をつけましょう。