あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

三宅由佳莉さんの2011年レビュー

 平成23年(2011年)は、三宅由佳莉さんにとって、生涯忘れ得ない特別な年になりました。もちろんそれは、独り三宅由佳莉さんのみならず、東京音楽隊にとっても、海上自衛隊防衛省、いや日本にとって忘れることのできない年です。

 でも、三宅由佳莉さんにとっては、二重、三重の意味で忘れ得ない特別な年であろうと思うのです。

 

 

02月11日(金)、第50回定期演奏会特別公演(大阪メルパルクホール

 「定期演奏会特別公演」がどういう位置受けなのかは分かりませんが、直後に東京オペラシティで同じ「第50回定期演奏会」が行われていることから、同じプログラムによる大阪でのプレ公演だったものと思われます。

 この日、三宅由佳莉さんが歌われたのは実質的に「高千穂Ⅱ 仏法僧の森」のみと思われます。この日の動画はありませんが、東京オペラシティでの「第50回定期演奏会」本公演のところに貼ってありますのでそちらをご覧ください。

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 この公演を聴きに行かれた方のブログ記事がなかなか興味深いので下のリンクから訪ねてみてください。曲目についても紹介されています。

 三宅由佳莉さんが歌われた「高千穂Ⅱ 仏法僧の森」については、「ああ、そうだそうだ、東音には歌手がいたんだっけ」と、未だ名前は出てきませんが、「『この曲、隊長が "東音と演奏する" ために作った曲だなぁ』としみじみ思ったのでした。」など、いいコメントがたくさんあります。

 自衛隊の音楽隊を相当聴き込んでいる方のようです。

【プログラム】海上自衛隊東京音楽隊第50回定期演奏会特別公演::こんなの聴いてきましたよ?

 

 

 

02月20日(日)、第50回定期演奏会東京オペラシティコンサートホール)

 そして、この日は東京オペラシティでの定期演奏会本公演です。上でも書きましたが、三宅由佳莉さんが歌われたのは、「仏法僧の森」だけだと思われます。

 以前、別記事でも書いたのですが、最初にこの動画を見たとき、私は魂を揺さぶられました。繊細な心象風景と悠久の時の流れの重みのようなものが、東京音楽隊の素晴らしい演奏と三宅由佳莉さんの力強い歌声によって、心のど真ん中目がけて飛び込んできたような感覚でした。下のリンクからお聴きになってください。

 この曲については、改めて記事を書きたいと思っています。

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03月11日(金)、東日本大震災

 この日14時46分、マグニチュード9という巨大地震が、東北地方を中心とする東日本を襲いました。未曾有の被害をもたらしたこの震災により、多くの方が犠牲になられ、日本のみならず、世界中の人々が悲しみに包まれたのです。

 これほどの大災害にどう向き合うのか、国として、社会として、その胆力が試される場ともなりました。

 自衛隊は、史上初の統合任務部隊を編成し、統合任務部隊指揮官(君塚東北方面総監)以下10万人規模の人員と多数の艦艇・航空機・車両・機力を投入して、初動の人命救助・広域にわたる不明者捜索に始まり、物資輸送、瓦礫撤去、避難施設における被災者への生活支援など多方面で基幹兵力となりました。

 発災直後、三宅由佳莉さんを始め東京音楽隊の皆さんは、陸海空自衛隊の各部隊に次々と命令が下り、現地へ向かう様子を見ながら、自分たちも現地へ赴き、救助や捜索に当たりたいと、いてもたってもいられない気持ちだったそうです。

 当時横須賀音楽隊に所属しながら、特に志願が許され、被災地支援に赴いた艦艇に臨時勤務となって現地での直接支援に従事した隊員もいます。目黒渚さんのことです。

 しかしながら、東京音楽隊はじめ、陸海空の音楽隊には「待機」が命ぜられました。

 それはそうです。自衛隊は、それぞれ専門機能を持った部隊がモジュールとして組み合わさるからこそ、全体として力が発揮できる組織です。音楽隊の機能を代替してくれる部隊などありません。ですから、音楽隊にしか担うことのできない専門機能である「音楽演奏」が効果的に力を発揮できる条件が整うまでは、現地に赴いても戦力にならないばかりか、却って槍先部隊の負担となってしまいます。

 東京音楽隊は、様々な小編成ユニットでの、被災者の心情を害すことなく癒すことのできる楽曲の選定や合奏訓練を続け、いずれ下るであろう被災者慰問のための派遣命令に備えました。

 そして、発災から約1ヶ月、ようやく音楽隊にも役割を担うことが許される日がやって来ました。

 三宅由佳莉さんは、7人編成のユニットの一員として、被災地を訪問し、歌を通じて避難所生活を余儀なくされている被災者の方々を慰問されました。下の写真は、その頃の様子です。

 東京音楽隊の演奏支援ユニットは、現地での宿泊・給食機能の負担にならないよう、自隊の缶詰入り糧食を持参し、来る日も来る日も東京からの日帰り派遣を続けました。しかし、毎日夥しい量の瓦礫を手で取り除き、泥に胸まで浸かりながら、行方不明者捜索を続ける他部隊の隊員や、何より辛い思いを抱えながらも不便な避難所生活に健気に耐えている被災者の方々のことを思えば、何が苦になったでしょう。

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 三宅由佳莉さんは、あるインタビューで、この時のことについて、「現地では、被災した方々のお話を聴いたり、子供たちと遊んであげたり、そんなことしかできなかったんですけど、精一杯努めなければいけないと思い、心を込めて歌わせていただきました」と話されていました。

 下の写真は、被災者の方の話を真剣な眼差しで傾聴する三宅さんです。こうした、一つ一つのふれあいを通じて育まれた想いが、「祈り」という曲に込められて行ったのですね。

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    このブログの読者である、ゆきかぜさん、りくさんさんによると、三宅由佳莉さんがtwitterを始められた頃、レクリエーション介護士(と思われます)の資格を取ったと呟いておられたそうです。きっと、この時の経験から、ご自分に必要なスキルだと認識されたのでしょう。生真面目で手を抜かない、三宅さんらしいなと思います。

 

  この年、自衛隊の各部隊は、年度業務計画を大幅に変更して震災対処と被災者支援に当たりました。東京音楽隊もその例外ではなく、特に年度前半に予定されていた演奏会の多くが中止または延期になったものと思われます。

 7月31日をもって、原発に対応する部隊を除き、自衛隊災害派遣終結し、以後、東京音楽隊の活動も平常の態勢に復帰しました。

 

 

 

8月28日(日)サンシティホール(越谷市)での演奏会

 この演奏会は、定例演奏会として行われたのか、あるいは地方公演の一種なのか、詳細は不明です。年度計画は大幅に変更になっているはずですので、どのようなやりくりが行われたのかについては、把握が難しいと思います。また、三宅由佳莉さんの動画も見つかっていませんので、とりあえず、吹奏楽演奏の動画を一つ入れておきます。

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9月27日(火)火曜コンサート(さいたまスーパーアリーナけやき広場)

 さいたまでの火曜コンサートは、東日本大震で被災され、さいたまスーパーアリーナで一時避難生活を送っておられた福島県双葉町の住民の方々を元気づけるため、3月23日に陸上自衛隊東部方面音楽隊による慰問演奏会を開催したのが起源だそうです。

 この慰問演奏会が大変好評だったため、防衛省として、さいたまスーパーアリーナの協力を得て、6月7日(火)より陸海空自衛隊および在日米軍軍楽隊が交代で出演する屋外コンサートとして定例化されたようです。

 このコンサートの動画では、三宅由佳莉さんの歌う姿、踊る姿がご覧になれます。

 三宅由佳莉さんと東京音楽隊の皆さんは、東日本大震災の被災者への慰問演奏を通じて、国民とともに歩むということの意味をしっかりと心に刻んだからでしょうか、国民を音楽で元気付けようという気持ちがストレートに伝わってくるコンサートになっていると思います。

 最初の動画は、三宅由佳莉さんが歌う「また君に恋してる」です。海士長の階級章をつけた三宅由佳莉さんは、まだあどけない表情ですが、坂本冬美さんのヒット曲である大人の恋歌を、まるで自分の持ち歌のように情感たっぷりに歌い上げます。

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 次の動画は、AKB48メドレーですが、三宅由佳莉さんのMC姿と、ダンスパフォーマンスが楽しめます。是非ご覧になってください。

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10 月06日(木)定例演奏会〜日本の心復興への祈り〜(すみだトリフォニーホール

 この定例演奏会は、そのパンフレットを見ても第何回との記載がありません。この年度の演奏会については、イレギュラーが当然あるだろうと思っています。ひょっとしたら、臨時に企画された演奏会なのかもしれません。「祈り〜a prayer」の初演演奏会ともなっているからです。

 まず、久石譲のアニメ・メドレーの動画をご覧になってください。とても丁寧に気持ちを込めて歌っているのがわかりますね。「君をのせて」は私の好きな曲であるからかもしれませんが、特に感動しました。

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 そして、初演となる「祈り〜a prayer」です。この曲は、東日本大震災の被災者に対する応援のメッセージとして、東京音楽隊長、河邊一彦さんが作詞作曲された作品で、後に日本中を感動させることになります。

    初演はピアノバージョンでした。太田沙和子さんの美しいピアノと、赤羽誠さんの重厚なコントラバスが奏でる、一つの作品と言ってもいいような流麗なイントロに引き続き、三宅由佳莉さんが美しく、そして静かに歌い始めます。今とは違う、初期ならではの新鮮な歌い方にハッとします。

 歌い終えた後、聴衆の喝采を浴びながら何度も涙を拭う三宅由佳莉さんの姿がとても印象的です。被災地で聴いた、たくさんの悲しい出来事、辛い気持ちや、それでも頑張ろうとする健気な姿などが脳裏をかすめたのでしょう。

    三宅さんにとって忘れることのできない演奏会なのではないでしょうか。

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 このコンサートに足を運ばれた方、関与された方のブログ記事へのリンクを貼っておきますので、訪ねてみてください。

海上自衛隊音楽隊::東京音楽隊::こんなの聴いてきましたよ?

www.bandpower.net

 

 

 

 

10月10日(月)横須賀音楽隊の「日本吹奏楽発祥百四十二年記念演奏会」に出演

 横浜市の山手にある本牧山妙香寺は「君が代」発祥の地として知られます。もっとも、歌詞は同じですが、現在の君が代とは似ても似つかぬメロディーです。そんな妙香寺は、日本吹奏楽発祥の地でもあることから、毎年体育の日に記念演奏会を行い、自衛隊、県警、消防や中・高吹奏楽部などが招かれているようです。

 2011年は、横須賀音楽隊が招かれ、東京音楽隊から三宅由佳莉さんが支援参加する形になりました。三宅さんは「里の秋」「初恋」の2曲で歌声を披露され、たくさんの拍手を受けました。下の動画で、その2曲を歌う姿と、アンコール曲「軍艦」の吹奏の際、舞台袖に佇む三宅さんをご覧ください。

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11月自衛隊音楽まつり

 この年の音楽まつりは、「愛・勇気・希望。今を越えて、その先へ」をテーマに開催されました。もちろん、大震災からの復興を強く意識したテーマです。

 オープニングは、まず三宅由佳莉さんの「アメイジング・グレイス」の独唱から始まります。英語での独唱後、バンド演奏が入り、その後日本語での歌唱になります。

 震災の犠牲者へのレクイエムであり、被災された全ての方々に対する復興への祈りが込められた演奏だと思います。

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 東京音楽隊のドリル演奏は、河邉隊長の傑作の一つである「イージス」から「宇宙戦艦ヤマト」そして行進曲「軍艦」という、実に軍艦つながりの力強い演奏になっています、国民の盾(イージス)となって力強く進む、そんなイメージでしょうか。

 三宅由佳莉さんは、「宇宙戦艦ヤマト」に入る前の「無限に広がる大宇宙」をスキャット(ボカリーズというべきか?)で美しく歌い上げます。 

 最後の「軍艦」では、旗持ちとともに行進する珍しい三宅さんの姿も見られます。

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 この音楽まつりで三宅由佳莉さんの歌う姿が評判になり、「祈り」に対する支持と併せ、ネットを中心に三宅さんの名前が広く知れ渡るようになります。

 この音楽まつりのノーカット版をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。

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matome.naver.jp

 

 

 

 

11月27日(日)・12月4日(日)ベビスマに出演

 フジテレビで2週にわたり放送された、深夜バラエティ番組「Baby SMAP(通称ベビスマ)」に、三宅由佳莉さんは、二人の先輩女性自衛官とともに出演されました。

 ベビスマは、SMAPの人気番組だった「SMAP X SMAP」のコーナーとして採用されることを目指す若手ディレクターの企画を、SMAPのメンバー自身が試して採否を決めていくという画期的な番組でした。

 そんな企画の一つ「合コンSMAP」は、ある職業の女性たちと、合コン形式でトークを進めながら、彼女達の職業を当てるという企画です。

 musicarabic13さんが、両日の放送を貴重な動画として残しておいて下さったため、私のような遅れ馳せ組も楽しむことができます。

 特技を問われた三宅由佳莉さんは、「板割り」で空手二段の腕前を、そして「赤とんぼ」で透き通る歌声を披露されました。

 この動画を見ていると、三宅さんの周囲への気配りや、謙虚な姿勢、まっすぐな人柄が本当によく伝わります。

 でも、「音大出なので」と事実とは異なることを言わされているのは、バラエティ番組ならではのことなのでしょう。任務とはいえ、三宅さんにとっては心痛む思い出の一つかもしれません。

 musicarabic13さんの動画から三宅さんにフォーカスして編集したものを埋めておきますが、元動画がとても楽しいので、是非バナー下のリンクから訪ねて見て下さい。

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Baby SMAP 2011.11.27 HQ Arabic sub - YouTube

Baby SMAP 2011.12.05 HQ Arabic sub - YouTube

 

 

 

 

 

12月05日(月)サントリーホール(定例演奏会?)

 クリスマスコンサートと呼ぶ、定例演奏会であろうと思われますが、この年の演奏会については、位置付けが必ずしも特定できないところがあります。

 このコンサートでの演目などの詳細は不明ですが、10月6日の定例演奏会で初演された「祈り〜a prayer」のオーケストラバージョンが演奏されました。太田沙和子さんのピアノによる美しいロングイントロから入り、オーケストラが伴奏を引き継ぐ形で曲に入って行きます。ピアノバージョンとオーケストラバージョンは、いずれ劣らず素晴らしいと思います。

 1番から3番まで、メロディは同じなのに、演奏の仕方、それから間奏の力強い演奏の効果なのでしょう、それぞれ印象が大きく異なります。名曲だと思います。
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 三宅由佳莉さんにとって、2011年は、歌手として、自衛官としてそして一人の人間として、自分自身を見つめ直す、そんな年だったのではないでしょうか。そして、震災という悲劇が契機となったことは心痛むことではありますが、様々な理由で喪失感を抱く多くの人々を、今後も救い、励まし続けるであろう、「祈り〜a prayer」という曲に出会い、それを育て、そして担っていく、そんな自分の使命を強く自覚した年でもあったに違いありません。