あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

時刻整合

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 海上自衛隊用語解説の続きです。

 

 今回のタイトルは、そのまま「じこくせいごう」です。

 意味は、時刻を合わせること・・・なんだよ、それだけか! と言わず、とりあえず読んでみて下さい。

 

 以前、「いいえ、我々は日本海軍です」という記事で、停泊中の艦艇では、毎朝8時に自衛艦旗を掲揚することを紹介しました。

retcapt1501.hatenablog.com

 自衛艦旗掲揚の前に、各艦ごとに時刻整合が行われるのが一般的です。

 一日の始まりに先立ち、艦内の全ての時計を合わせることにより、艦の運航に際し、各部署間の連携に齟齬が生じないようにするのが目的です。よく、特殊部隊ものの映画などで、作戦発動前に各員の時計を合わせるシーンがありますね。あれが時刻整合です。

 最近のシステム化された艦艇では必要ないのでは?とも思われますが、軍事組織にとって、時刻というのは大変重要な要素ですし、万一何らかのトラブルがあって、いくつかの時計の針がずれていたりすると、一大事です。そのようなトラブルを発見するためにも時刻整合は大切なプロセスだと言えます。

 時刻整合は、通常0745(まるななよんご)に行われます。午前7時45分ということです。艦内マイクを通じ、以下の要領で行います。

 「0745に時刻整合を行う、1分前」

 「30秒前」

 「15秒前」

 「5秒前」

 「よーい(用意)」

 「じかーん(時間)0745、時刻整合終わり」

 このように、海上自衛隊の時刻整合は1分間かけて行います。

 実際に時刻整合を行なっている動画があります。2艦のマイクがちょっと時間差で聞こえてくるので、わかり辛いですが、興味のある方は見てください。

www.youtube.com

 

 米海軍でも、時刻整合を行います。「Time Check」と呼びます。彼らの時刻整合の要領は以下のとおりです。

 「Time Check. When I say "Time", it will be exactly zero seven four five, 15 seconds.」

 「10 seconds.」

 「5, 4, 3, 2, 1, Time ! , zero seven four five. Time check out.」

 このように、米海軍では時刻整合を15秒でやってしまいます。

 

 この辺りの日米の差異は、なかなか興味深いですよね。確かに、15秒もあれば、時刻整合を行うことは可能ですから、米海軍のやり方はとても合理的だと思います。

 ではなぜ、海上自衛隊では1分もかけて行うのでしょうか。

 確かに、何もしていない人が、「時刻整合を行う」のマイクで準備を行うのに時間はかからないでしょう。でも、何らかの作業中であった場合、突然「15秒前」と言われても対応できるとは限りません。でも、一分もあれば、大抵のことは一区切りつけることができます。

 海上自衛隊と米海軍は、同盟軍として長い付き合いになりますし、互いをよく理解し、相互の信頼も篤いのですが、今回ご紹介した時刻整合に限らず、海上自衛隊の繊細な配慮と米海軍の合理主義の違いが現れる場面は結構多いので面白いと思います。