あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

特務艇「はしだて」とは…

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 海上自衛隊には、護衛艦や潜水艦、掃海艇のような戦闘艦艇の他にも、色々な目的のために建造された多彩な支援艦艇があります。

 今回ご紹介する特務艇「はしだて」は、なかでも異彩を放つ存在だと思います。

 誤解を恐れずに端的に表現するならば、「ディナークルーズ船」、あるいは「迎賓艇」です。

 写真を見て頂けばわかりますが、上部構造物は白で塗装され、軍艦と言うよりはクルーザーのようですね。私自身は乗ったこともありませんが、内装もなかなかだという話です。

 海上自衛隊には、給養員という調理を担当する自衛官がいます。各艦艇や航空基地などで、隊員の食事作りを一手に担っています。舞鶴にある第4術科学校(じゅっかがっこう)で専門教育を受けた本格的な調理人達で、転職し、一流ホテルのシェフを務めている人もいるそうです。そんな彼らの中でも、特に腕利きとされる隊員が選抜されて「はしだて」に乗り組んでいるようです。

 なぜかと言えば、外国高官等の迎賓のため、艇内で、本格的なシッティングディナーや、立食パーティーを行うからです。

 こんな話をすると、洋上で飲み食いするためにわざわざ船を建造するなんて税金の無駄使いだ、そんな金があるならミサイル艇でも造れ、と仰る方がいらっしゃいます。

 でも、それはちょっと短絡的過ぎると思います。防衛力には色々な側面があり、それらを隈なく押さえておくことが我が国の安全につながると信じるからです。

 以前、「音楽隊という戦力」という記事で、音楽隊は如何なる意味で戦力なのか、彼らは一体、どう戦っているのかについて書きました。その際にも、音楽隊のことを「税金の無駄使い」という批判があることに触れ、税金のムダ使いどころか、何兆円もの防衛費に匹敵する戦力であることをご説明しました。

retcapt1501.hatenablog.com  「はしだて」についても、同じことが言えます。海外からの賓客をもてなすのは、ホスト国として当然のことですが、軍の高官をもてなすことは、実は単なるおもてなしではないのです。上の音楽隊の記事でも触れましたが、軍高官を迎えた時の儀仗や栄誉礼の際の音楽隊・儀仗隊の術力、斉一さ、気迫などを、歓迎を受ける高官らはよく見ています。その後の接遇についても同じです。接遇を見れば、その軍隊の士気・練度が垣間見えるからです。

 はたからみるとなんとも和やかな接遇の現場では、武器を使わない戦いが繰り広げられているのです。「侮り難い」「信頼できる」「頼りになる」・・・そう思わせることが、わが国の安全にどれほど寄与することでしょう。

 誤解しないで下さいね、接遇だけで安全が保てると言っているのではもちろんありません。先ほども書きましたが、防衛力には色々な側面があり、それらを隈なく押さえておくことが我が国の安全につながるということを言っているのです。

 だから、接遇という小さいようで大きい側面に、一定の資源を集中したのが「はしだて」であり、腕利きの調理人たちということになります。

 もっとも、外国高官への接遇任務だけでなく、海上自衛隊への理解と支援を得るため、国内外の様々な賓客を招いて洋上懇談会が行われています。

 実は、東京音楽隊の皆さんも、「はしだて」が接遇任務で出航する際には、小編成のバンドを組んで洋上のパーティを盛り上げます。

 「はしだて」で行われた洋上懇談会に参加された方がブログに記事を掲載されていましたので、リンクを貼らせていただきます。

blog.goo.ne.jp

 記事の中から、音楽隊の写真を2枚ばかり拝借します。

 太田紗和子さん、藤沼直樹さんの顔が見えますね。第一種夏制服の左肩にモールを装着した簡易演奏服装での演奏です。音楽隊の服装のバリエーションは多いですね。

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 最後に太田紗和子さんが、音楽隊を代表してご挨拶されたようです。今回の演奏任務は太田さんが指揮官だったんですね。

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 ひょっとしたら、三宅由佳莉さんが「はしだて」で歌声を披露するような機会もあるのかもしれませんね。

 今回は、特務艇「はしだて」のこと、そして音楽隊の演奏支援任務についてご紹介しました。近々、改めて関連記事を掲載予定です。