あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「インカコーラ?デリシオーソ?」

 遠洋練習航海の続きです。

 先回までは、パナマパナマ運河のお話でした。

 二度目のパナマ運河を通峡し、太平洋に戻った我が艦隊が次に目指したのは南米ペルーのカヤオ港でした。

 パナマからペルーに至るまでに、私たちが初めて通過したのが赤道です。

 赤道を通過する際には、艦上で「赤道祭」というものを行います。海の神様から赤道の門を開ける鍵を授けていただき、その鍵で開門することで安全に赤道を通過するという、儀式?を行い、その後は、特設ステージ上での乗員や実習幹部による余興で盛り上がります。

 赤道祭については、後日別記事でご紹介したいと思います。なかなか面白いですよ。

 さて、ペルーです。

 ご存知のとおり、ペルーはブラジルと並び、日本からの移民とその子孫が大変多い国です。  

    アルベルト・フジモリ氏が日系人として初めて大統領に就任し、治安の回復や経済の立て直しに辣腕を振るわれたのを覚えておられる方も多いかと思います。

    私たちがペルーを訪れたのは、フジモリ政権が誕生するもっと前のことで、当時は、ペルー共産党の軍事組織「センデロ・ルミノソ(輝ける道)」が猛威を振るっていました。ペルー全土でテロや破壊活動が横行し、軍人や警察官など制服着用者が次々と殺害される不穏な情勢にありました。

 このため、せっかく訪問したにもかかわらず、安全上の配慮から、艦隊の乗員には自由上陸は認められず、公式行事への参加だけとなりました。軍服が狙われている以上、仕方のないことではありました。

 そんな我々のために、日系人の方々が、歓迎バーベキュー大会を催してくださいました。「ラ・ウニオン」という、大きな広場のような催事場に、なんと6000人もの日系の方々が集まってくださり、まるでお祭りのような、途轍もなく大規模な歓迎バーベキューとなりました。

 移民2世以降の方々は、日本語があまり得意ではなく、我々と同世代の3世ともなると、ほぼスペイン語以外は通じません。メキシコとパナマで苦労したこともあり、私たちは、航海中に一生懸命スペイン語の勉強をしてきましたが、そんな付け焼刃で意思の疎通がスムーズにできるわけもありません。

 でも、もともと同じ日本人の血が流れていることもあり、お互い一生懸命理解しようとすることで、短時間のうちに打ち解けることができました。

 このバーベキューの席で、日系ペルー人の方々から勧められたのが、インカコーラです。「インカコーラ?デリシオーソ?(インカコーラ?おいしいの?)」と聞くと、「シー、セニョール、ムーチョ!(ええ、とっても!)」

と答え、クーラーボックスの中から瓶を取り出してくれました。なんと、黄色い液体です。これがコーラなの?せっかくですから、いただきましたが、なんといえばいいのか、パイナップルジュースにうっすら炭酸が入っているような感じでした。おいしいのですが、バーベキューに合うかは疑問かな…

  今回、この記事を書くにあたり、ネットで調べてみましたら、なんと、現在我が国にも一定量が輸入されているとのことで、国内でも飲むことができるようです。更には、缶入りも出ていました。どこかでまた、インカコーラに出会うかもしれません。

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 さて、治安状況の悪いペルーでしたが、当時のベラウンデ大統領は大の親日家ということもあり、我が艦隊の停泊中に、首都リマからわざわざ訪問して下さいました。

 この写真は、かとりのヘリ甲板で行われた、大統領閣下への栄誉礼の模様です。

 大統領閣下の正面で捧げ銃(ささげつつ)の敬礼を行っているのが儀仗隊、その向こう側、自衛艦旗の近くで演奏しているのが音楽隊です。

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 大統領閣下は、栄誉礼を受けられたのち、司令官の案内で艦内を見学され、海上自衛隊練習艦隊に関するコマンドブリーフィングを受けられました。

 一国の国家元首をお迎えすることは、艦隊にとって大変名誉なことでありますし、海上自衛隊の士気の高さを直接ご覧に入れ、日本国に対する信頼を、更に深めていただく良い機会ともなりました。