あれこれdiary

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三宅由佳莉さんの秘めた想い

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 平成21年から23年にかけて、放映されたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」をご覧になった方も多いと思います。

 司馬遼太郎さんの同名の歴史小説を、司馬さんの遺志に沿い、忠実に映像化するため、NHKが文字どおり総力を挙げて制作した大作です。

 極東の小国であった日本が近代国家への道を歩み始めた明治という時代を、欧米列強に伍するという、坂の上の雲のような目標を追い求めた道程と捉え、その覚悟と決断により近代日本の礎を築いた人々の軌跡が描かれています。

 主人公の一人である秋山真之が帝国海軍軍人であったことから、ドラマの制作には海上自衛隊も全面協力し、江田島、呉、舞鶴など、海上自衛隊の施設内に今も残されている帝国海軍時代の歴史的建造物を使ってのロケなどが行われました。

 そしてこのドラマの主題歌「STAND ALONE」は、放送作家小山薫堂さんが歌詞を手がけ、久石譲さんが書き上げた名曲です。

 因みに、小山薫堂さんは、三宅由佳莉さんと同じ日本大学芸術学部のご出身で、日藝の名声を高めた功績により、本年(2017年)4月4日、三宅さんと一緒に「第11回日藝賞」を受賞されています。

 ところで、この主題歌は、代表曲「Time To Say Goodbye」が世界中で愛されている英国のソプラノ歌手サラ・ブライトマンさんが、完全な日本語で歌い上げたことで話題になりましたよね。

  歌詞もメロディーも、日本人の心を揺さぶらずにはおかないこの曲、何人かの日本人女性歌手も歌っており、三宅由佳莉さんもその一人です。

  デビューアルバム「祈り〜未来への歌声」にも収録されていますが、その後の歌い方の進化を見ていると、三宅由佳莉さんには秘めた想いがあるのではないかと思えてくるのです。

 それは、途轍もない国難に直面しつつも、覚悟を決め、凛としてこれに立ち向かった日本人の心を、英国人に表現してもらって、それでいいのかという想いです。

 更に言うならば、このドラマの主人公が海軍の真之・陸軍の好古という秋山兄弟であり、クライマックスが日露戦争の帰趨を決した、日本海海戦であることから、軍人の心を持った自分が歌い上げなければならないという想いでもあります。

 昨年の4月に、奈良の橿原神宮で行われたトワイライトコンサートで、三宅由佳莉さんが歌った「STAND ALONE」は、まさにそのような想いが伝わる名唱だと、私は思います。

 間奏から最後のクライマックスに入る前、右手の拳を握りしめ、気合を入れている姿が、誠に印象的なこの動画、ぜひご覧になってください。

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 三宅由佳莉さんが、実際そのような秘めた想いを胸に抱きながら歌ってらっしゃるかどうかは確かめようもありませんし、例え聞かれても、秘めた想いを語る人はいないでしょう。

 でも、この歌を歌うときの彼女の姿、特に最後の「凛として」のところで見せる目力の、鬼気迫る迫力がそう思わせるのです。そして、そういう方であってほしいと思うのです。

 本当の意味で「凛」としている三宅さんが歌うからこそ、そして技術ではなく、心で歌う三宅さんだからこそ、この曲の歌詞が生きてくるのだと、私は思っています。