あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「死ねるんですか?」

 今回も昔の思い出話で恐縮です。まだ、3等海尉(幹部海上自衛官の一番下の階級・海軍少尉)だった私は、とある部外のサークルに参加していました。ある日のサークル終了後、帰り支度をしていると、大学生と思しき青年が話しかけてきました。

自衛官の方ですか?」

「そうだよ。ひょっとして自衛官を希望しているの?」

と軽く返したところ、いきなり

「戦争になったら、死ねるんですか?」

・・・初対面の人間に対して、この種の不躾で無意味な質問ができる人間というのは、たいてい「私たちは平和が好きなんです!」と、誰にとっても当たり前のことを、あたかも自分たちだけの特別な思いででもあるかのように声高に主張したがる、勘違い平和主義者です。

 私は、彼の目を見据えながら言いました。

「まず最初に言っておくけど、初対面の人間に対し、自分の名も名乗らず、いきなり個人の死生観を問うような質問をするのはちょっと失礼じゃないのかな。」

 そして、続けてこう言いました。

「我々自衛官は、別に死ぬために仕事しているわけじゃないよ。国を守るために必要な任務を遂行するのが仕事であって、確かに有事の際には身体に損傷を負ったり生命を失うリスクが高くなるけれど、それは任務を遂行した結果としてそうなるのであって、死ぬことが目的である訳ないじゃないか。君の質問は、消防士に対して『火災現場に行ったら死ねるんですか?』、F1レーサーに対し『レース中に事故に遭ったら死ねるんですか?』と聞いてるのと同じで、全く無意味だよ。」

 彼は、私の言っている意味がわからないようで、怪訝な顔をしていました。

 危険を伴う任務でも遂行しなければならないからこそ、自衛官は入隊時に「服務の宣誓」を行います。ですが、それは「俺は死ぬのなんか怖くない、いつでも死ねる」などという下らない蛮勇を示すものではなく、淡々とした覚悟を表明するものです。

自衛官の服務の宣誓

「私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもって専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」

 海上自衛隊東京音楽隊の皆さんも入隊時に宣誓されています。もちろん、三宅由佳莉さんもです。 

 今日は生き死にの話になりましたが、実は終活コンサルタント「ミスターくよう」さんのブログで興味深い記事を読んだことがきっかけで思い出したのでした。

 よかったら訪ねてみてください。

www.shuukatsu.blog