あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

山本七平さんの「『空気』の研究」

今週のお題「読書の秋」

 

 山本七平さんが他界されてから四半世紀にもなりますが、遺された数多くの著書は、未だに私たち日本人が進むべき道を指し示す灯台のような存在であり続けてくれているような気がします。

 「『空気』の研究」は、私が30代の頃、そのタイトルに興味を引かれて購入しました。研究と銘打ってはいるものの、真面目な顔でとぼけた冗談を言っているような、ちょっと人を食った風なタイトルが気に入ったのでした。

 研究対象である「空気」とは、もちろん私たちが吸っている空気のことではなく、「あの場の空気では、ああするしかなかった」「とても言い出せる空気ではなかった」などというときの、あの「空気」です。

 そもそも、そんなものを研究しようとすること自体、私のような凡人には考えも及ばないことですが、幅広い学識に基づき本書の中で展開される論理は、普段、私たちが何となく釈然としない思いを抱いている「空気」に関する問題を、分かりやすく解き明かしてくれます。同時に、私たち日本人の意思決定が、しばしば、実体のない「空気」なるものの影響で、議論の末に得られた論理的結論とは違うものとなることにも触れられ、その代表として紹介される「戦艦大和の沖縄特攻」のくだりなどは、単なる教訓ではなく、今日的な問題として強く認識させられました。

 普段何気なく口にする「空気」ですが、私たち日本人の思考や行動様式に大きな影響を与えているのは事実です。その正体を知るためにも、一度正面から向き合ってみてはいかがでしょうか。

 「『空気』の研究」、秋の夜長に、是非一読をお勧めします。

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