あれこれdiary

海自OBによる偏見御免徒然あれこれdiary

「思想が違うので...」

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 防衛大学校では、大学の学園祭と同じような行事として、毎年11月に開校記念祭が行われます。学校の敷地内で行われる訓練展示、観閲行進、棒倒しなどは、なかなか一般の大学ではお目にかかれない人気のイベントですが、横須賀市文化会館大ホールでも、大隊対抗演劇や吹奏楽部による演奏会のほか、アーティストを招いてのライブ等が行われます。今年の開校記念祭は11月11日(土)・12日(日)に予定されているようです。

 私が在校していたのは40年も前のことですが、ある年、開校祭実行委員会が、人気急上昇中だった「サザンオールスターズ」に出演を打診したところ「思想が違うので...」との理由で断られたとのことでした。

  学生個々の思想はそれぞれ異なるでしょうから、言われている「思想」とは、防衛大学校あるいは自衛隊の基本的な考え方のことを指すのだろうと思われました。

 ところが、防衛大学校の学生綱領は「廉恥、真勇、礼節」であり、自衛隊の使命は「我が国の平和と独立を守る」ことです。これらと違う思想って、まさか「破廉恥、卑怯、無礼」「我が国の平和と独立を崩壊させる」ではないでしょうから、おそらく「思想」の問題ではなく、軍事的なものからは距離を置きたいというメッセージなのだろうとこれまで理解してきました。

 ところがです、数年前に封切られ、一部の大手新聞はじめ、著名な文化人の方々から、戦争賛美、特攻隊賛美のとんでもない駄作と酷評された、百田尚樹さん原作の映画「永遠の0」では、主題歌「蛍」を、サザンオールスターズが担当しているではありませんんか。

 どういうことなのか考えてみましたが、百田尚樹さんは、「私は『永遠の0』で特攻を断固否定した。多くの特攻隊員に慕われていると言われている大西瀧治郎中将さえも批判した。それなのに一部の粘着する連中から『百田尚樹は特攻を賛美して肯定する軍国主義者だ』と執拗に非難される。多くは本を読んでない人だが中には読んだと言う者もいるから唖然とする」と、述べていますので、サザンの皆さんは、この百田さんの主張を支持され、この映画が本当の意味での平和へのメッセージであると理解されているのだと思います。

 軍事的なるものをただ遠ざけていたあの頃とは「思想が違うので...」というところでしょうか。

 それにしても、普段は思想信条の自由、表現の自由を声高に叫んでいる人たちほど、「永遠の0」のような作品に対しては、その自由を認めたがらない傾向があるような気がします。何をそんなに恐れているのでしょう。この映画が大ヒットしたのは、単に、普通の日本人の心に響く素晴らしい作品だったからであり、戦争賛美のプロパガンダ映画なら、大多数の人は見向きもしなかったでしょう。私たち一般大衆がバカだと思っているのでしょうか(-_-)

  自分の考えと合わない作品がヒットしたからといって、殊更悪し様に言いふらすのもどうかと思いますし、自分の考え方に自信があるなら、どーんと構えて、「思想が違うので、私は見ない」と言えば済むことだと思います。

 

 零戦の話題にちなんで、「ラバウル海軍航空隊」が収録された海上自衛隊東京音楽隊の2013年東郷の杜音楽祭の動画を紹介します。川上良司さんの歌(17分40秒頃から)が素晴らしいです。まだ、海士長の荒木美佳さんはMCとして輝きはじめた頃でしょうか、好感度高いです。

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